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長瀬賢弘 プロコフィエフ・シリーズ Vol.1を聴く

3/20/2015

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長瀬賢弘さんのピアノ・リサイタル@すみだトリフォニー小に行って来ました。プロコフィエフのピアノ独奏曲の全曲演奏シリーズの第一弾とのことです。(意欲的ですね!)長瀬さんは飛び切りの腕前を持つピアニストであると同時に、2014年にプロコフィエフのピアノソナタ5番と9番の研究で東京芸大から博士号を取得したという知性の持ち主でもあります。プロコフィエフのピアノ曲全曲演奏会を開く日本人がいるとすれば彼をおいて他にはない、といってよい俊英です。

冒頭は未完のソナタ10番Op.137。プロコフィエフの絶筆となった音楽です。1,2分の短い断章でしたが、その充実した響きと多様性に引き込まれました。そして引き続きソナタ第一番Op.1へ。長瀬さんの演奏については、精度の高いテクニックをバックに知的で緻密な表現をする、というイメージが強かったのですが、この若書きのソナタの演奏ではそれに加えて熱い情念のほとばしりが感じられて、聴き手は強いインパクトを受けました。作曲当時支配的だったロマン的な音楽観とそれと対立するような若きプロコフィエフの二十世紀的なモダンな感性との葛藤が表現されていたと思います。そして初期の小品集Op.2、Op.3、Op.4。音楽史上重要だがあまり演奏されない(「悪魔的暗示」を別にして)これらの作品の数々を優れた演奏で順番に通して聴けたというのはありがたいことです。

プログラム後半の最初の曲はピアノソナタ第五番Op.38初版。このソナタでは改訂版Op.135が演奏されることが多く、私は初版を初めて聴きました。二つの版の一番の違いは最後のクライマックスの部分ではないでしょうか?改訂版がより劇的な演奏効果を狙っているのに対し、初版だとあっさり終わってしまってちょっと拍子抜けする感じなのです。しかしこのソナタはプロコフィエフのソナタの中でも特に洗練された気品に満ちた曲ですから、それが一貫するという点では初版が良いのかもしれません。どちらの版にせよ、極限まで音が切りつめられているこのソナタはややもすると単調になりやすい面を持っていますが、長瀬さんの演奏はポリフォニーの処理が素晴らしく、内声それぞれに十全のニュアンスが与えられているので、シンフォニーを聴いたような充実感を感じました。そして演奏会の締めくくりは有名なロミオとジュリエットから10の小品。一つ一つの小品の性格を際立たせるというよりは、長瀬さんの個性が全体を覆う、そんなスタイルの演奏でした。最後の別れなど、もっと深刻ぶる表現もあり得るわけですが、一見淡々とした感じの演奏から深い悲しみが表現されていて、かえってじわっと聴き手の心に染み入るものだったと思います。

オール・プロコフィエフの演奏会というと敬遠してしまう向きもあるでしょう。実は私も内心ちょっと心配がなかったわけではありません。しかし、実際に体験してみると、プロコフィエフのピアノ曲の持つ多面性を痛感することになりましたし、何より長瀬さんの充実した演奏を体験すると、そんな危惧を感じた自分が浅はかだったと強く感じることとなりました。第一回目の今回は作品1と作品137つまり最初と最後の二曲を聴くことができましたが、来年以降はポピュラーな戦争ソナタなども入ってくることでしょう。ロシアのピアノ音楽が好きな人間には聴き逃せないシリーズになりそうです。

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